どうやって録音したらいいの?
とにかく自分の耳で聞いて良い音がするポイントを探すことです。音鉄における良い音とは自分が録りたい音という意味です。ですから、同じハコに乗っても人によってマイキングポイントは様々です。まず自分の耳で良く聞いてみましょう。
- 通過音
列車の通過音を録音する場合には駅の近くで加速音が録れる距離が丁度良いと思います。線路から数メートルの位置から台車の辺りを狙うと通貨後に線路が鳴る音も録れます。ただし、駅の近くだと踏切がある場合が多く、警報音や通過待ちの車のエンジン音がうるさいので録音ポイントに使える駅は非常に少ないのです。SLの場合には列車の速度が落ちてドラフト音が大きくなる上り勾配も良いのですが、大抵は撮影のファンが押し掛けていてニッチもサッチも行きません。また、SLの場合には汽笛の音圧がとても大きいですから余程慎重に距離と録音レベルを選ばないと派手に歪んでしまいます。マイクの設定位置や録音レベルを試行錯誤して良いポイントを探してみましょう。この苦労こそが音鉄の醍醐味だと思います。
- 車内音
誰も乗っていなければ両側の窓を開けて、左右それぞれのマイクで車外から入ってくる音を狙うのが良いのですが、吹き込む風を避ける位置を探さなければなりません。加速時と減速時では風向きが正反対になります。低い位置にマイクを上向きにセットして天井から反射して来る音を狙うのも良いでしょう。ただし、くれぐれも他の乗客や乗務員の迷惑にならないように。
窓からの音を拾う場合にはトンネル内やコンクリート擁壁、鉄橋部分ではかなり音が大きくなり、土手の上等では小さくなります。このレベルの変化は後で聞く場合にかなり聞き苦しくなる場合があります。マイクのセッティング位置が難しい場所でもあります。「これでOK」と思っていてもそれらの通過時に歪んでしまうことがありますからモニタリングとレベル調整に気を付けましょう。
混み合う場合には連結部分にステレオマイクをセットする手もありますが、ホロの音が派手に入ってしまいます。ここは開き直って網棚に荷物と一緒にマイクを置き、車内の雰囲気を積極的に残すのも良いかもしれません。
車内音を録るときに注意しなくてはならないのは車内放送用スピーカーとマイクロホンの位置関係です。出来れば社内放送も鮮明に残しておきたいところ。専用マイクをスピーカー近くに置いてミキシングする手もありますが、他のお客さんも居ることですし、店開きは控えめにしましょう。
ところでこの車内放送用スピーカー、最近の車両は天井のエアコンの吹き出し口の奥に隠れていて見つけにくかったりします。
マイクをセットする位置とそこでの音の特徴について考えてみましょう。
車端部
電動車の場合にはモーターの音が録りやすい位置です。ただし、車両によっては連結幌部分からの音(外部から飛び込む音や幌の金具の軋み音)が邪魔になる場合があります。
車両中央
比較的静かな場所です。また、前後のジョイント音がバランス良く録れますが、音はこもり気味になります。ロングレール区間ではあまり良いポジションではないでしょう。
機関車の直後のデッキ
今はこのようなシチュエーションで録音できる列車はかなり少ないのですが、機関車の走行音を録音するのにはかなりオイシイポジションです。電気機関車+旧客の場合にはパンタの摺り音なんかも録れます。
天井近く(網棚等)
車内アナウンスが録りやすい位置ですが、おしゃべりや、特に地下鉄の場合にはトンネル内の反響音なんかが入りやすい位置です。
膝の上
マイクを常に見ていられる安心感はありますが、自分自身の音が入りやすいのでカチンカチンに固まっていなければなりません。また、携帯電話等の影響も受けやすいようです。ただし、乗客の耳の位置に近いポジションになりますからいつも聞いている、違和感のない音が録りやすい位置です。
床
当然乗客の足音が派手に入りますが、おしゃべりは控えめになります。セッティング次第では床からの直接振動を拾ってしまうことになります。特に特急のような車販のワゴンが通過するような場合には向かないと思います。
ドアの隙間
この場所は車外の音が拾える意外な穴場です。例えば気動車の場合には車内音は排気系の低音で籠もりがちになりますが、ドアの隙間から聞こえるエンジン音は結構ヌケの良いエンジンそのものだったりします。キハ35系のような車種であれば各ドアによって隙間から聞こえる音がエンジン音、変速機音、駆動音と異なります。ただし、ステレオ収録の場合にはLRの各チャンネルにどのように収録するかが問題となります。
いずれにせよその時の条件(乗客の多寡、車両の種類、季節、路線等々)によってベストなマイクポジションは変わりますので色々と試してみてください。特に103系のようなすきま風の多い電車だとほんの僅かのポジションの違いで聞こえる音がびっくりする程変わります。
いずれにせよ、大切なのはモニタリングです。実際にどのような音が録れているかを確認すると同時に録音ミスを防止する意味でもしっかりとモニタリングしましょう。接続のゆるみや思わぬノイズ、録音ボタンの押し忘れ等モニタリングによって発見出来るミスはたくさんあります。
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