◆2005/1/15 TM@WORKのマスタリング (byたぬき)
今回は自分が出演したステージの録音のマスタリング処理についての記録。
収録はマックを使用したマルチチャンネルのライブレコーディングだった。いつもの天井エアステレオマイクに加えて各パートがラインで収録されている。
いつもの方針で基本は天井エアとし、これに対してイコライジングやエフェクトで補えない部分をライントラックを利用して補強することとした。
この基本方針を最初に持っておかないと作業に入ってから逡巡しっぱなしでなかなか収束しない。
天井エアをストレートに聴くとちょっと狭苦しい感じが有るので薄くリバーブを加えて空間を広げることにした。
編集の単位はステージを通しての統一感を重視して、40分のファイルを相手にする。
エフェクト処理時間の待ちが多いが仕方がない。
リバーブに関してはWET100%のファイルを別途作成し、ノンエフェクトにMixして行くことにする。
こうすると演奏の合間等でリバーブレベルを下げられ、不自然さを押さえることが出来る。
つまり、観客の拍手が始まるまでに徐々にリバーブ成分を無くすのである。
MCが始まって次の曲の開始まではリバーブ追加分はゼロ。
今回のマスタリングには大きな問題が2つ有った。
1つは1曲目冒頭でegのチューニングが甘く、違和感が大きいこと。
そしてもう1つは全体的にkbの出音レベルが低いこと。
出だしのegは不本意ながらディレイの深さをトライアンドエラーで探して妥協点を決めた。
つまり、ディレイでピッチ感を曖昧にしようという作戦だ。
もう1つのkbの出音レベルの問題についてはライントラックからのものをレベルを見ながら加えればOK...だと思ったが、これがそう単純では無かった。
特にピアノの音色の場合は位相を厳密に合わせておかないと聴感上違和感が有る。
少しでもズレが有るとホンキートンクになってしまう。
まずはそのタイミング合わせに非常に苦労した。
エアーの音源はラインと比較すると波形がかなりナマっているために「ココ!」という相似形のポイントが非常に掴みづらい。
両方の音源で共通に聞こえるピークのキツ目なポイントを探したが、一方がラインであるためにそれも見つからない。
結局は大まかには波形を見て基準点を決定し、聴感上で数サンプルづつずらしながら最終的な決定をした。
これで位相は合わせることが出来たのだが、Mixした結果を聴いてみると妙にkbだけが浮き上がって輪郭が立っている。
まるで手書きの背景に写真を合成したようで違和感が大きい。
切り出した短いサンプルでいろいろと試行錯誤してみるが、最終的には短めのリバーブを適宜Mixすると馴染みが良くなる事を発見。
予めWetのみのファイルを作成しておき、タイミングを前にずらしてMixした。
この「タイミングを前にずらす」というのがどうやらミソのようだ。
常識で考えると残響が先に聞こえることなんかあり得ない。
あり得ないことで人間の耳を騙すということなのか、元波形を良い感じになまらせる効果があるのかはハッキリとは解らないが、馴染みは良くなるみたい。
このMix加減はピアノの場合とオルガンの場合で異なり、MC中はノイズを出さないためにレベルをゼロにする等をやはり試行錯誤しながらオートメーションに仕込んだ。
全体的には不満な部分も残るが、とことん追求していると永遠に完成しないのがこの作業。
妥協点を見いだすのもセンスのうちなのかもしれない。