ベースについてのおハナシ(その3)



◆フレットレス化計画
最初に買ったベースがフレットレス(身の程知らずは今更言うてくれるな)だったこともあり、フレットレスベースには昔からかなり惹かれるところが有るのがやはり変人なのかしらん..なんてことはどうでも良い。とにかくフレットレスが好きというのは確かな訳で、当然の成り行きとしてネックをフレットレスにしてみたいなんて思うのだ。
実は、今を去ること20年以上前、夜中に急に思い立って当時手元にあった唯一のベースのフレットを全部抜いた事が有る。その時にはそれ以上の仕上げの存在すら知らないから抜きっぱなしで弾いていた。
指板には哀れにも抜歯後の大穴が明きっぱなしだった。
で、人間20年も経つと少しは物知りになるもので、フレットレスベースには大きく分けて2種類があることを知る。1つは元々フレットレスベースとして作られた楽器、もう1つは元々はフレットが打たれていたものを改造した楽器。指板からヤットコでフレットを抜いて、その後の溝を何らかの材料で埋めて、場合によってはエポキシ等の硬い塗装で保護する..ジャコのベースがそれだよね。
元々フレットレスとして作られた楽器は本来フレットの線が無い。そりゃそうだ、わざわざミゾを切って線を入れるような面倒な事はしたくないし、そもそもフレットレスに線が有るのは邪道でシロートっぽくカッコ悪いとされていたんだからね。
ところがジャコがそういうカッコ悪いとされて来たような楽器を手に一躍ベースヒーローになっちまったもんだから今ではわざわざミゾを切って線を入れたフレットレスを作るし、その方が売れていると思われる。
その音楽があまりに斬新で格好いいもんだから今までダサイとされて来た見てくれまでがカッコイイと思われるようになっちゃったんだね。要するに人間と一緒で見てくれよりも中身が大事なんだね。
で、またまたオークションでフレットの無いネックを手に入れた。元々安物のネックでフレットも無理矢理抜いたらしく、ミゾの辺りはささくれ立っているし、ナットの近くは汚らしく彫刻刀で削られている。
この惨憺たる状況の前にどうしたものか考え込んでしまうが、いくら考えてもなっちまってるもんはしょうがない。とにもかくにも薄板でフレット溝を埋めることから始めるとしよう。
まず、薄板探しだが、その辺のホームセンターみたいな所じゃまず売って無い。大きな画材屋か、東急ハンズのような所...そうだ、東急ハンズを覗いてみることにしよう。さすが、スプルースだのヒノキだの何だかんだと数種類の薄板が置いてある。しかしどれにすれば良いもんやら...まぁ、ギターなんだからスプルースかな?ということで細いノコでフレット溝をサラってから細く切った薄板を差し込んで行くんだが、結構きつい。 削ったり叩いたりしながら全部差し込んでから指板全体にクリアラッカーを吹いてみた。これは仕上げという訳じゃなく、薄板の仮止めの意味。で、はみ出した部分をおおまかに削り落としてから指板全体をサンドペーパーで削って見る。ローズウッドの赤い削り粉が出てペーパーの目がすぐに詰まっちまうんだな。
なんだ、やってみると結構簡単でオモロイじゃん。仕上がりも思ったよりキレイに出来たし。 という訳で、早速ボディーに組み込んで弦を張って見ると..やっぱ元が安物のネックだから指板の精度も悪いんだろうなぁ。おまけにシロート仕事であるが故に指で撫でてみると埋め木のところで微かに段差を感じる。 そして、その辺りで弦がビビる。結論としては、フレットレスの場合には特に慎重な指板の平面性加工が必要(特にハイポジション)ということでした。
この作業を経験すると妙な自信が付いてしまってフレッテッドベースを見ると無性に抜きたくなるのが困ったもんだ。*1
という訳で、次の日に楽器屋へちゃんとしたフレットレスベースを物色に出かけた。試してみるとトーシローの仕事など足元にも及ばない仕上げだ。特にバッカスのビーナスフレットレスが気に入ってしまった。試したのは青い色だったんだけど、これのサンバーストが有ればその場で誘惑に負けていたかもしれない。
他にはリバーヘッドの指板が塗装されているジャズベ。パッシブジャズベのFLはフェンダージャパンのを既に持っているんだけど、指板塗装したのがどんな感じなのか...
誘惑はまだまだ続くのであった。

◆ベースの重さ
今日はベースの重さについて考えてみることにする。
例えばベースのカタログを眺めているとボディーの材質と色以外は同じ仕様なのに値段が違う場合が有るよね。フェンダーのカタログだとアッシュボディーがアルダーのものよりも1万円位高かったりする。これは木材の値段の差が1万円なんだろうか??..と、そんな疑問を持った事は無いだろうか?
してみれば、単純野郎の自分としてはアッシュの方が音が良いのか?なんて一瞬だけ思う。しか〜ぁし、物事はそんなに単純ではなく、そもそもイイ音って何だっていう答えようのない命題にブチ当たってしまうじゃぁないか。こういう時はもう好きか嫌いかで判断するしかない。そのためには弾いてみるしかない。
実際に弾いてみるとやっぱり材質の特徴というのが有るということが解った。特にそれはアンプに繋がずに生で弾いた時に感じた。
・軽いベース
 ボディー本体に弦の振動が伝わってジンジンと振動する感じ。生でも結構音がデカいみたい。
・重いベース
 硬くて重い、比重の大きなボディーは弦を強く弾いてもビクともせず。弦は暴れることなく正確に振動している感じ。
ま、こんなもんかな。ここでプラグを挿してアンプで鳴らしてみると、そんな特徴がやはり出ている気がする。重いベースはクールに粒ぞろいの音が出るし、スラップしてもプルの音が思い切りハデになったりしないみたい。軽いベースはどこか人間味が有るというか、泥臭いというかそんな感じがする。
自分には軽い方が面白く思えたりするんだよね。弾き手のムラがもろに音に影響する感じが素敵に思えるんだな。重い方は信頼の出来るお堅いヤツで、それはそれで素晴らしい事なんだけど、チャメっ気を出しても「そうですか」とか軽くいなされて黙々と仕事を続ける(*2)あたりに可愛げが無い。いっしょに堕落してくれるヤツの方がその分「しっかりせにゃ」という自覚みたいなものに目覚めさせられて、もともと怠惰なおいらには良いんだろうなってこと。
最初はこの辺の感覚は全くわからなかった。でもベース着せ替え道に励むようになってからは特に意識して違いを感じ取ろうとしているせいか何となく(*3)は解るようになった。そういう意味でもシンナー臭に耐えた価値があったと思うね。

◆電気のこと
よくマニアの間ではベース内部の電気部品を取り替えると音が良くなると言われるんだけど、これに関してはいつも眉ツバの思いを持っていたのです。
だってさ、あんな短い配線材料、中身のパーツと言えばせいぜい可変抵抗器とコンデンサーが1つ。それをどうせいっちゅうんじゃ!!
今回コレを変えてみようと思った動機は、抵抗入りケーブルなのだ。
あの、マイク入力しか無いラジカセにラインレベルの信号を入れる時に使うという、オーディオマニアが見たら明らかに眉をひそめてイヤな顔をしそうなシロモノ。で、たまたまソレを使ったらやたらと音が悪い。それはもう筆舌に尽くし難い劣化で、聴くに堪えない位に悪い。これはひょっとして中身の抵抗がワルサしているのかなぁ...してみればベースの中の配線で音が変わるカモ...という次第。
まずは、秋葉原にて0.022マイクロファラッドのコンデンサーを物色して来る。色々と置いてあって何を買ってよいものやらようわからんのですが、とりあえず同じ容量で100円位のものを2種ほど購入。そもそも安物のベースについているのは工場仕入れ価格1ケ5円位と思われるような安物が着いていて、見てくれも何となく悪い部品に思えるのだ。何故アキハバラかというと、楽器屋で買うと不当に(そう思えるだけかもしれない)高いから。だってコンデンサー1ケが数千円もしたりする(*4)んだもん。
それと、配線に使う電線も物色した。こちらもとりあえず布皮膜の線で高いヤツを購入。またまたついでに楽器屋にも行ってみた。やっぱコンデンサーは高い。電線も置いてあるが、こちらは580円とギリギリ許せる位の値段だったので買ってみた。
家に帰ってからハンダごてを握ってみる。こうしてみると、イイカゲンなはんだ付けがされているもんだ。
プレベ2種で試してみたのだが、正直なところちょっとオドロキだったのです。おいらの老化が進んだ耳でも輪郭がクッキリ、音が明瞭になった感じがするじゃありませんか。この改造(と言えるのか??)はオススメです。
ただし、元から良い楽器は回路に使っている部品もそれなりに良いものを使っているようなのでヘンな改造は返って事態を悪化させることになりかねないと思われます。
ちなみにmoonのベースの中身はこんな配線になってました。


※1 エッチな意味じゃないので勘違いしないように。
※2 エンタープライズ号のスポックみたいだ。
※3 あくまで何となく。この曖昧な感じがいいよね。
※4 物の価値っちゅうのはワカランもんだ。